【5月第2週】米中協議に進展、世界の貿易再編が動き出す――市場回復とリスクの交錯
- 中間 祐也
- 5月21日
- 読了時間: 6分

トランプ、英国との貿易協定合意を発表
トランプ大統領と英国のスターマー首相は、米英間で新たな「経済繁栄協定」に合意しました。これは米国の高関税政策「解放の日」導入後、初の二国間合意で、英国からの自動車輸出に対する関税は25%から10%へ引き下げられ、航空機部品や鉄鋼・アルミニウムの関税は撤廃されました。また、米国産エタノールや牛肉の輸出も促進されます。一方で、英国のデジタル課税や米国の一律10%関税など課題も残りますが、ほかの国との交渉のモデルとなる可能性もありポジティブにとらえていいと考えます。
NY連銀、米消費者の3年先インフレ期待、22年以来の高水準
NY連銀の調査で、米消費者の3年先インフレ期待が3.2%と2022年以来の高水準に上昇しました。これはトランプ政権の関税政策などが物価上昇圧力として意識され始めた兆候です。FRBは現在、政策金利を据え置いていますが、長期的なインフレ期待の上昇が続けば、利上げ再開の議論も浮上しかねません。金利引き締めの思惑は株式市場にとって下押し圧力となりやすく、同時に金利差拡大を見込んだドル高が進む可能性もあります。今後のFRBの対応と市場の反応に注目です。
米中貿易協議、「著しい進展」と両国の交渉代表が自賛

2025年5月11日、米中はジュネーブでの貿易協議で「著しい進展」を発表し、市場は好感。米国側だけでなく中国側からも前向きな発言があり、S&P500先物は約+1.47%と大幅に上昇しています(※注1)。関税の段階的引き下げや知的財産・為替問題が議題とされ、世界経済を牽引する両国の改善期待が高まっています。ただし、合意内容や撤廃時期は依然不透明で、先行きは不確実です。ベッセント財務長官が12日に詳細を発表予定で、市場の注目が集まっています。
※注1:S&P500先物はmini S&P500(期近)を参照。5月12日14時05分時点。
執筆時点で両国の関税が115%引き下げられる90日間の措置が合意されたと発表されました。これを受けて米国株先物はさらに急上昇しています。
インドとパキスタンが停戦合意、米国が仲介?

インドとパキスタンは4月に発生したテロ事件から軍事的な小競り合いを続けていましたが、2025年5月10日、即時停戦に合意しました。ただし、停戦後もカシミールで爆発が起き、双方が停戦違反を非難し合うなど、合意の持続性には不透明感が残っています。停戦と同時にトランプ氏が仲介を喧伝しましたが両国は否定しています。インドSENSEX指数は約1.1%安と、市場は今後の情勢を慎重に見極めようとしています。
停戦促すEU首脳会談にトランプ
2025年5月10日、キーウでウクライナと英仏独ポーランドの首脳が会談し、ロシアに30日間の無条件停戦を求めました。トランプ米大統領も電話で参加し、欧米の結束が演出されましたが、その直後にロシアの「停戦前交渉」提案を支持し、独自路線を示します。ウクライナは停戦を交渉の前提とし、姿勢に隔たりが生じています。さらに5月15日には、トルコ・イスタンブールでゼレンスキー大統領とプーチン大統領による直接会談が予定されており、和平に向けた外交の行方に国際社会の注目が集まっています。
まとめ、ポイント
先週に続き、最も注目を集めたのは米中貿易交渉です。スイスでの協議開催が事前に報じられていた通り、実際に高官同士の交渉が行われ、一定の進展があったと両国が発表しました。また、米英間で新たな貿易協定が締結されたことも、市場にとっては今後の二国間交渉のモデルとして前向きに受け止められています。
一方、各地の地政学リスクは依然として不透明ながら、いくつかの地域では鎮静化の兆しも見られ、過度な悲観は後退しつつあります。S&P500は、4月2日の相互関税発表時の水準をほぼ回復しており、市場には徐々に安心感が広がっています。こうした状況を踏まえ、引き続き現在の保有方針を継続いただきたいと考えています。
ディスクレーマー
株式会社みかたはいる
金融商品仲介業者 四国財務局長(金仲)第36号
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