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【5月第1週】「地政学・政策リスクの中で見える“長期投資の本質”──バフェット引退と世界経済の今


スイス・ジュネーブで米中貿易交渉へ

2025年5月9日から12日にかけて、米中の貿易交渉がスイス・ジュネーブで開催されることが、米国のベッセント財務長官より発表されました。長官は今回の交渉について「目的は包括的な貿易協定ではなく、まずは緊張の緩和にある」と説明。現在最大145%に達する対中関税についても「持続不可能」と表現し、まずは対話の枠組みを整えることが重要だと強調しました。

これまで、トランプ大統領が交渉進展を発表しても、中国側が否定するなど膠着状態が続いていましたが、今回は中国が好む中立国スイスでの開催という点からも、実際に交渉が行われるとの期待が高まっています。


インド・パキスタン間の緊張の高まり

4月22日、インド領カシミールのパハルガムで、観光客を狙ったテロが発生し、26人が死亡しました。インド政府は、この攻撃の背後にパキスタン拠点の武装組織が関与していると非難しました。この事件を受け、インドは5月6日に「シンドゥール作戦」と称する空爆を実施ました。

これに対し、パキスタンは民間人の死傷者が出たと非難し、報復としてインドの戦闘機を撃墜したと主張しています。

これを受け地政学リスクの高まりを懸念し金価格が上昇しており、マーケットはエスカレーションが懸念されています。一方で両国とも核保有国であり大規模な紛争に発展するリスクは低いと考えます。またパキスタンは英国を介してウクライナやイスラエルに砲弾を供与しており、一説によると5日程度しか戦闘継続ができない量の弾薬しか保有していないとされています。これらのことからも大規模な紛争に発展するリスクは低いと考えます。インドの代表的な株式指数である「インドSENSEX指数」にも大きな動きは見られません。

出所:楽天証券「インドSENSEX指数(日足・過去3か月分チャート)」より引用※5月8日時点
出所:楽天証券「インドSENSEX指数(日足・過去3か月分チャート)」より引用※5月8日時点

米国・ウクライナ間での鉱物協定が締結

2025年4月30日、米国とウクライナは「米ウクライナ再建投資基金」の設立に関する鉱物資源協定に署名しました。この協定は、ウクライナの天然資源の共同開発と戦後復興支援を目的としています。米国で行われた米宇首脳会談では「既に行われた軍事支援」に対する見返りとして鉱物資源協定を結ぶという案が米国から出され、それをゼレンシキー大統領が拒絶することで激しい言い合いに発展しました。4月26日にローマで行われた教皇フランシスコの葬儀に際し、アメリカのドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が非公式に会談を行い、両国の信頼関係が再構築されたと報じられています。選挙時に短期的にウクライナ戦争を停戦に導くと宣言していましたがここでも厳しい現実に合わせて政策を柔軟に転換する姿勢を見せています。


パウエル「トランプの発言は我々の仕事に何ら影響しない」

5月7日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、トランプ大統領からの利下げ要求について「我々の仕事に何ら影響しない」と明言しました。トランプ氏は自らの関税政策による株価下落を受けて利下げを求め、一時はパウエル氏の解任を示唆しましたが、市場の反発を受けて発言を修正していました。

なお、大統領にFRB議長を解任する権限はありませんが、任命する権限はあります。パウエル議長の任期は2026年2月5日までで、トランプ氏が再び大統領となれば再任されない可能性が高いと見られます。ただし、次期議長の就任には上院の承認が必要であり、現在共和党が多数派でも、極端な候補には党内から反対が出る可能性があります。過去にはスティーブ・ムーア氏やハーマン・ケイン氏が指名見送りとなった例もあります。

基軸通貨国かつ貿易赤字国である米国にとって、強いドルの維持は不可欠であり、今後もドルの信認を損なわない人物がFRB議長に選ばれると考えられます。


まとめ:賢人にならい長期投資を

2025年5月、ウォーレン・バフェット氏(94歳)は、バークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、同年末をもって最高経営責任者(CEO)を退任する意向を表明しました。一代で世界有数の投資会社を築き上げ、「投資の神様」とも称されるバフェット氏の引退は、大きな節目といえます。

総会では、「貿易を武器に使うべきではない」「関税は戦争行為とも言える」「世界が豊かになれば、我々もより豊かになれる」と述べ、自由貿易の重要性を訴えるとともに、トランプ前大統領の関税政策を強く批判しました。

一方でバフェット氏は、2016年の大統領選後に「選挙の前日と同じ株を、選挙の翌日にも買っている」と語り、政治的変化に動じない長期投資の姿勢を明示しています。また「政治と投資を混同するのは大きな間違いだ」「私は株を大統領で選ばない」とも発言しており、トランプ氏のような政権であっても、米国株の長期的成長性に対する信頼が揺らぐことはないと考えられます。

株式市場では数年に一度、保有株を手放したくなるような出来事が起きてきましたし、今後も起きるでしょう。バフェット氏の引退という節目を機に、恐怖に惑わされず、長期的視点で投資を続ける重要性をあらためて認識すべきだと思います。

出所:Google Finance「Berkshire Hathaway Inc.(クラスA株)株価チャート」より※5月8日時点
出所:Google Finance「Berkshire Hathaway Inc.(クラスA株)株価チャート」より※5月8日時点

ディスクレーマー

株式会社みかたはいる

金融商品仲介業者 四国財務局長(金仲)第36号


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